知識と共感を携えて向き合えば、ニュースの捉え方は変わる──社内イベント「Ask Me Anything about Ukraine」レポート
「ロシア」「ウクライナ」に関係する内容の可能性がある記事です。
極端な内容・真偽不明の情報でないかご注意ください。ひとつの情報だけで判断せずに、さまざまな媒体のさまざまな情報とあわせて総合的に判断することをおすすめします。 また、この危機に直面した人々をサポートするために、支援団体へのリンクを以下に設置します。 ※非常時のため、すべての関連記事に注意書きを一時的に表示しています。
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知識と共感を携えて向き合えば、ニュースの捉え方は変わる──社内イベント「Ask Me Anything about Ukraine」レポート

UB note

こんにちは、Communications Teamの髙田です。

ユーザベースには、お互いの視点から見える景色を共有しあい、理解を深める「オープンコミュニケーション」を尊重する文化があります。

不安や疑念からチーム不和が起こり、退職者が増えてしまった過去の苦い経験を教訓に、意見がすれ違ったときは互いにリスペクトを持ち、率直に話し合って乗り越えることが推奨されているのです。メンバーたちはオンライン・オフライン問わず、日々さまざまなテーマで知見や感情を交換しています。

ユーザベース社内では2022年3月23日に、オンライン座談会「AMA about Ukraine」が開かれました。AMAは「Ask Me Anything」を略したネットスラングで、ネット掲示板等で「中の人だけど、質問ある? なんでも答えるよ!」と切り出す際に使用されるワードです。

つまり、「ウクライナ情勢について(スピーカーが分かる限り)なんでも答える会」。日々ニュースで流れるウクライナ情勢に対して理解を深めたいメンバーと、国際紛争や共産主義国家での生活を経験したメンバーが意見を交わしました。

ニュースでは数字や情報を通じた大局ばかりが「事実」として報道され、その裏にいる多くの当事者に発生しているミクロの事象まで想像が至らない──そのため、どのように事態を捉えるべきなのかがわからず、困惑している方も多いのではないでしょうか。

この会は「当事者の感情や経験の共有から、当事国の現状を少しでも自分ごとに引き寄せて考えるキッカケになれば」と、NewsPicksのメンバーが中心となって企画されました。

全社員を対象に有志の会として実施し、100名以上が参加。資料に英語も併記されたほか、当日は同時通訳も入り、海外メンバーでも聞ける環境下で実施されました。

※本座談会は、物事を多面的に捉え、理解を深めることが趣旨である点にご留意ください。
※本座談会および記事の内容につきましては、ユーザベース社・NewsPicks編集部および当該国の考えを代表するものではありません。

当日の様子

当日は以下の4人が登場。ウクライナやロシアで起こっている実態についてさまざまな視点や経験を交えて議論しながら、視聴メンバーからの質問に答えました。

  • モデレーター・スピーカー:Dana Kiarashi(NewsPicks編集部)

  • スピーカー:Viktor Makhnutin(ロシア出身)

  • スピーカー:Irena Inumaru(セルビア出身)

  • 発起人・総合司会:染原 睦美(NewsPicks Topics Team)

まずは染原から、会の趣旨と流れについて説明。オープンコミュニケーションの鉄則である「尊重」「挑戦への応援」「シェアへの感謝」の必要性をアナウンスします。

流れを周知してからはDanaにバトンタッチし、本編に入ります。

ウクライナ情勢の復習

スピーカー3名の自己紹介が終わった後は、国際取材経験が豊富で、現在もウクライナ情勢を報道し続けているDanaより、侵攻の発端から2022年3月23日時点の最新情勢までを説明。Human  Rights Watch(世界各地の人権侵害をモニターする国際NGO)による「マリウポリで3,000名の民間人が死亡」という報道や、数百万におよぶ民間人が国外に避難しているという情報を交えて、歴史に残る戦争が繰り広げられている事実を伝えます。

それぞれの当事者体験

その後、つい3年ほど前までロシアに住んでいたViktorとコソボ紛争を経験したIrenaが、自らの経験をもとに、いまロシアやウクライナがどのような状況になっていると考えられるか、紛争によってどのような体験をしたかを語ります。その上で、日本で生まれ育ったメンバーでは想像もつかないモノの見え方をいくつもシェアしました。

その後の質疑応答では多くの質問がメンバーから寄せられ、予定時間を大幅に超えて終了しました。

3人が教えてくれた「景色」

景色交換の時間中、3人はそれぞれの人生経験やモノの見え方、その際に感じた気持ちを、隠すことなく教えてくれました。なかでも特に印象的で、ユーザベースに属さない方にもぜひ伝えたい「景色」を共有したいと思います。

※あくまでも彼女・彼ら自身の視点であり、ユーザベース社の考えを代表するものではないことをご留意の上、読み進めてください。

ロシア出身・Viktorから見える景色

今回の戦争は、ロシア人として恥ずかしいし、申し訳ないと思っています。自分たちの力で止められたかもしれないのに、そうすることができなかったからです。

実は10年ほど前、選挙結果に対して不満を感じた市民が起こしたデモ(=下院議員選挙の不正疑惑をめぐり、2011年12月に発生したロシア反政府運動)に自分も参加したんです。ロシアにしては大規模なデモだったんだけど、その時は何も変えられなくて……。

結局その1年後、プーチン氏は再び大統領の座に戻りました。デモの参加者は逮捕され、5〜10年の懲役刑を言い渡されました。さらにはロシア政府に届け出のないデモの実施が、法律で禁止されてしまったんです。私が10年前にもう少し頑張れば、今回の戦争は止められたんじゃないか──そう思うと、罪悪感が湧きます。

ここまではロシア国外に住む私の考えですが、ロシア国内に住むロシア人がどう思っているかというと──戦争に対して良くないと思っている人は一定数いる一方、プーチン大統領の支持率は上がっているのが実態です。調査が信じられるものかどうか、という別の議論は差し置いても、上がっていることは事実だと思いますね。そして、悲しいことに心から戦争を応援しているロシア国民もいる。

ただ、ロシア国民全員が戦争を良く思っているわけじゃないことはわかってほしいです。「戦争を良く思っていない」、そう言いたいけど言えない状況なんです。

民族紛争を経験したIrenaの景色

私が生まれた──今はもう存在しないユーゴスラヴィア(現:セルビア)という国は、本当に政情が不安定でした。

どこかに出かけようとすれば「大統領が暗殺された」というニュースが流れたり、仕事で企画していたキャンペーンもマフィアが絡んで立ち消えたり、NATOの空爆が始まった翌日には国境が封鎖されたり……。そんなことがしょっちゅう起こる国に住んでいたから、今住んでいる日本が平和すぎて、たまにどう過ごせばいいかわからなくなっちゃう(笑)。

ウクライナ避難民の状況をみんなが理解するのに役立つことを願って、私の戦争体験をシェアしますね。1999年のコソボ紛争のとき、新聞記者だった父が「近いうちに間違いなく戦争が起こる。数日以内にNATOが空爆を開始するのが決定的だ」という情報をいち早く掴んだんです。

その日のうちに母と弟の私の3人は、小さなバスに乗り込んで、知人の伝手をたどってオーストリアのウィーンまで避難しました。そうしたら、本当に翌日には空爆が始まってしまったの。当時私は20歳で、念願だった美術大学に合格して自分の夢を追い始めたばかりでした。

すぐ終わるかと思ったらなかなか終わらないし、国境も封鎖されて国に戻れなくなっちゃって……。結局、母・弟・私は日本にいる祖母の家まで逃げたんだけど、報道を見たらセルビアが一方的に悪いことになっていて、本当にビックリした。空爆で普通の市民が辛い想いをしているのに、それが全然報道されていなくって……。

ニュースを見ただけで、裏に大変さを強いられている大勢の人たちがいることまで想像できる人は少なかったんじゃないかな。実際、祖母にも「いつまでいるつもり?」と言われたことを覚えています。

今の事態を見ていて感じるのは、「物事はそんなにシンプルではない」っていうこと。当事国の企業や国民が全てに賛同しているわけではないし、祖国が自分のアイデンティティになっていることは誰にとっても同じなんです。それなのに、避難先で心ない扱いを受けたり経済制裁で生活が苦しくなったり、政治や紛争に直接関係しない市民たちばかりが大変な想いをしている。なんでこんなことになってしまうんだろう、って思います。

これも私の経験だけど、避難先の日本で「セルビア軍が悪い」というニュースを見たり、イギリスでセルビア人であることを告げたら「わー、殺されるー!(笑)」と冗談で言われたりしたとき、本当に悲しかったんです。そもそも私、誰も殺さないし! 国が悪者にされると自分まで悪者になったようで自信を無くしたし、自分のアイデンティティを他の人に言えなくて、本当に悲しかった……。

それに、そもそもヨーロッパ大陸は地続きだから、歴史を追うごとに国境がコロコロ変わります。日本みたいにひとつの国が単一民族で構成されているわけじゃないんです。だから、誰かが「明日からここはロシア領です」と宣言しても、その領土の人全員がすぐ納得するわけがない。国境を変えるということは、そんなにシンプルな話じゃないんです。

その経験をベースに今の戦争報道を見て、悲しくなっていることが2つあります。1つはロシアの政権が戦争を仕掛けた影響で、ロシアという国やロシア市民が悪者になっていること。世界中でロシア人のお店が破壊されたり、ロシア人の会社が制裁をかけられているでしょう? でも、彼らが全員ロシア政権を支持しているわけではない。おかしいですよね。

もう1つは、たとえこの戦争が終結しても武器のマーケットは存在し続けるだろうということ。戦争の裏にはビジネスがあって、誰かが得をするということは忘れられません。心から平和を願っている身としては、複雑な気持ちですね。

イランの教育を受けたことがあるDanaの景色

私は生まれも育ちも日本なんですが、小学生時代に父の祖国であるイランの教育を受けていた時期がありました。イランも国家元首が強大な権力を持っているわけですが、子供ながらに違和感を覚えた記憶があります。

たとえば、校舎のすべての教室にはホメイニー氏とハーメネイー氏(イランの初代国家元首および現国家元首)の肖像画が飾られているんです。日本で育った私からすると「誰なんだ? この人たちは」と(笑)。独裁国家には、プロパガンダや偏った教育がつきものです。

先ほど「ロシア国内ではプーチン政権への支持率が上がっている」という話がありましたが、ロシアでも昔からイラン同様の教育やプロパガンダ政策が行われているんだとしたら、その現象の背景は理解できますよね。

社内の反応

開催が発表されたSlackの投稿には200件を超えるリアクションがついたほか、「録画をシェアしてほしい」という要望も多数。当日のZoomチャット欄では、当日共有された景色の解像度をさらに上げるための映画書籍が紹介されていました。

会の後には感謝の声とともに「ViktorとIrenaの実体験を聞くことで、リアルな感覚を把握できた」「おすすめされた映画を観て、平和や自由について改めて考えた」という感想も。自分の経験をシェアしたViktorとIrena、モデレートを務めたDana、そして発起人の染原に、メンバーは改めて敬意と感謝を送っていました。

最後に

かなりデリケートな内容だったこともあり、社外秘で行われた今回のAMA。しかし、多様性と共感、そして勇気に満ちた今回の取り組みを、より多くの方に知ってもらいたい! と私は考えました。

一方で報道機関である「NewsPicks」を運営する株式会社ニューズピックスは、ユーザベースグループの一員です。ユーザベース社・NewsPicks編集部・および当該国の方針を示した意見ではないこと、AMA開催メンバーと相談したうえでUB note編集部として執筆・編集したことを、改めてここに付記します。

そのうえで、最後に私の感想を。

日本で生まれ育ち、今は縁あってユーザベースに所属する私は、賛否両論が許されるオープンなコミュニケーションを当たり前のものとして捉えていました。ですがこの会で知ったのは、1つの意見しか許されない国も存在すること。そして、その閉塞感が疑問や不安を生み、諍いへと発展する現実でした。

自分の理解を超えた「景色」の数々に驚きや悲しみを感じたのは事実です。一方で、新たな知識や知見を得たことでニュースの裏にさまざまな想いを抱えた人々が大勢いることをリアルに想像できるようになり、ニュースの捉え方が変わったことを実感しました。

だからこそ、それを乗り越えた先にある「誰もがオープンに自分の意志を表明できる、平和な世界」の実現をより強く望むようになりました。

今回のnoteを通じて、最後まで読んでくださったあなたに少しでも「景色」が共有できていることを願っています。

[執筆:髙田 綾佳/編集:筒井 智子、Dana Kiarashi、Irena Inumaru、染原 睦美]

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経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる。 SPEEDA・FORCAS・NewsPicksなどのサービスを提供する株式会社ユーザベースの公式noteです。 ※インタビュー中の役職・組織名は当時のものです。