ユーザベース新規事業グランプリ、事業化決定「トイカケ」の2人が語る、新規事業の面白さ
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ユーザベース新規事業グランプリ、事業化決定「トイカケ」の2人が語る、新規事業の面白さ

ユーザベース(以下「UB」)は新規事業育成プログラム「think beyond」を実施し、新規事業創出に取り組んできました。2020年にスタートした第1期は、計33件の応募があり、うち2件の事業化が決定しました。

今回はグランプリを獲得し、ユーザベースから独立して事業を立ち上げることになった、成長したい若手社会人のためのセルフコーチングサービス「トイカケ(仮称)」の古平と日野に、think beyondでの学びやこれから事業を立ち上げる意気込みなどについて話を聞きました。

プロフィール:

古平 翔太(こだいら しょうた)
早稲田大学大学院 基幹理工学研究科卒業。大学院在籍中にインターンとして株式会社ニューズピックスに入社し、学生向け事業「HOPE by NewsPicks」の立ち上げに従事。2020年同社へ新卒入社し、ブランドデザイン事業部にて広告セールスを担当。株式会社ユーザベースの社内新規事業創出プログラムthink beyondにて「トイカケ」を考案し、グランプリを受賞。2021年11月、ユーザベースから独立し株式会社トイカケを創業。

日野 空斗(ひの そらと)
明治大学情報コミュニケーション部卒業。2019年からインターンとして株式会社ニューズピックスに入社し、ブランドデザイン事業部やSportsPicks編集部などで編集を経験。インターン同期の古平とthink beyondに出場し、グランプリを受賞。株式会社トイカケを共同創業。

トイカケ

お互いの深い背景理解とモヤッとした瞬間に話すルール

――そもそもthink beyondに参加したキッカケは?

古平 翔太(NewsPicks Brand Design Div./以下、「古平」) 僕はやっぱりインターン時代に「HOPE by NewsPicks(以下「HOPE」」)をやらせてもらって、新規事業の楽しさに気づいたのが大きかったですね。でもHOPEは事業として成り立たせるのが難しくて、残念ながら入社前にクローズが決まったんですよ。そのリベンジをしたかった。

坂本さん(坂本 大典/NewsPicks 取締役 新規事業担当)との採用面接で「新卒でUBに入るなら、20代のうちに経営者を目指せ」って言われたのも、ずっと頭に残っていました。

ただ、新卒1年目って仕事のキャッチアップをしている段階ですよね。think beyondに興味はありながらも、現業と並行してできるか不安があったので、一度は出ないと決めました。でも祐美さん(村樫祐美/think beyond事務局長)からのDMで、「迷ったら挑戦しよう」と思ったんです。そのDMがなかったら、「今年は仕事に集中して、think beyondには来年出よう」って出場しなかったと思います。

日野 空斗(元NewsPicks Brand Design インターン/以下、「日野」) 古平が出ていた1次審査後の社内報を読んで、参加を決めました。もともとインターン時代から、自己分析をものすごく簡単にするサービスをつくりたいと思っていたんですよ。どんな環境でやろうか考えたり、周囲の人と話したりしていたんですが、think beyondで古平と一緒にやるのが一番実現できそうだと思ったんです。

社内報を読んで解決したい課題が近いと感じたので、「同じようなことを考えているから、今度話そうぜ」って声をかけました。僕はアイデアがあって、古平は対象者を救いたい気持ちがあって。自分の性格上、いつか起業するんだろうなとは思っていたんですけど、想定より5年くらい早かったですね。

最終審査でプレゼンする古平

──チームの特徴・強みを教えてください。

日野 チームとして何が強かったかというと大きく3つあって、お互いの深い背景理解と、良いコミュニケーションをしようという意識が強かったこと。あとは毎日ミーティングしていたことです。それは最終審査後も変わりません。

深い背景理解に関しては、お互いの過去のこと──どういう家庭環境で育って、どういう価値観を持っているのか、今後どういうことをしたいかなどなど、延々と語り合ったんです。

「HOPE」をやっていたときもよく話してはいましたが、think beyondを通してお互いがwillを探求したことで、より解像度高く自己開示をし合えたと思います。「こういう価値観で話しているんだろうな」って感覚的に気を遣えるようになったし、大前提として相手を信じたコミュニケーションができるようになりました。

良いコミュニケーションへの意識については、初期段階で「モヤッとした瞬間に話そう」というルールをつくって、これがブレイクスルーになりました。

「あれ? 思っていたのと違う」とか、ちょっとイラッとした瞬間って、原因がわからなくて言語化しないことも多いんですけど、それが積み重なるとストレスになると思っていて。個人にとってもチームにとっても健全ではないし、それを溜め込むとうまくいかなくなると思うんですよ。

古平 オープンコミュニケーションって、自己認識が高く言語化できることが前提としてあると思うんですけど、僕らはそこまでじゃないというか、もう少し手前の段階だと思うんです。ベースの心理的安全性はあるけど。だからモヤッとした瞬間、口に出す、お互いに時間を取って話すことをルールにしています。

日野 そうすると、モヤッと=ネガティブ感情から始まった会話も、ちゃんと話し合いをして改善策なりネクストアクションが決まると、「はい、俺たちまた成長しました!」みたいにポジティブに終われるんです。

モヤッとした瞬間に口に出して、「今、言い方ちょっとキツかったよね」「いや、自分もイライラしていて……」ってすぐ解決できる。

古平 僕らのチームは社会人1年目で、お互いそんなに高いスキルがあるわけではないので、スキルで補完し合うのは難しい。なので原理原則に従おうと思ったんです。麻生さん(麻生要一/AlphaDrive CEO)の本『新規事業の実践論』(NewsPicksパブリッシング)や新規事業創出について説く動画は4〜5周して、それ通りに進めました。

また、日々のミーティングは時間は短くてもいいから回転数を意識し、毎朝30分でもいいから会話して、仮説検証と対話量を増やしました。

強みと弱みの補完関係でいうと、僕は脇目も振らず真っ直ぐ前に突き進むタイプ。ある意味、盲目的になっちゃって、他の人の気持ちをないがしろにしてしまうこともあります。でも日野は物事を整理するのが得意なタイプなので、毎朝アウトプットを出し続ける僕に対して、「こういうことじゃない?」って整えてくれました。僕が前に進め、日野がそれを整え、一緒に形にしていくような補完関係でしたね。

日野 メンタルを崩した経験のある古平が、顧客側の立場でたくさんのインサイトや仮説を出して、それに対してどうすれば顧客の課題を本当に解決できるのかを自分が考えて、話し合う。そして顧客に当てていく。最後の方は役割も溶け合っていきましたが、序盤はそんな役割分担でした。

古平 よく「それって本当に顧客の課題解決につながるんだっけ?」「その課題って本当に顧客が解決してほしいと思っている課題だっけ?」みたいな会話をしていました。思いつきのアイデアではないように、とにかく仮説検証を重ねていった形です。

自分たちの想いが、実社会に反映されるのがとにかく嬉しかった

――しんどかったことは?

日野 自分に原因があるんですけど、コミットメントが担保できなかったときですね。現業である編集者の仕事とthink beyondに加えて、もう1つプロジェクトに加わった時期があって。

結果的に1ヶ月くらいthink beyondのこと何もできなくて、古平からの信頼を裏切ってしまったし、できていない自分への辟易感もあって……。僕ら2人はリーダーとメンバーって関係性ではないので、古平としても「やれよ」とは言えなかっただろうし、お互いしんどかったんじゃないかな。

古平 その時期、僕は本当のところを言うとイヤな気持ちがしました。お互いのコミットメントレベルの認識合わせをしたいみたいな話は何度かしましたね。向かっている先は同じだけど、とはいえ状況が違うのも理解できるからイヤだとは言えなかったんですよ。

もちろん進捗しないストレスはあって、日野の中でthink beyondの優先順位が下がっているのは自分のせいなのでは……って思っちゃったんですよ。目指している事業に魅力がないんじゃないか、ミッション・ビジョン・バリューがドンピシャではまっていないから時間をかけられないんじゃないかとか。

今思えば、「できていないなら、どこまでやれて、どこからできていないの?」ってちゃんとコミュニケーションを取るべきでした。その後ちゃんと話し合って、自分が一旦進めておくので、プロジェクトが終わったら戻ってこい、ってことになりました。

今でも覚えているのが、ミッション・ビジョン・バリューの話をしているとき。ゆっくり話し合う時間が取れなかったこともあって、目的や意図をすり合わせることができていなくて。日野から「古平は課題解決したいんじゃなくて、そういうのをつくって外部に発信したり、目立ちたいだけなんじゃないの?」って言われたんです。

「違う! けど、自分で気づいていないだけでそうなのか?」って自問自答しちゃった。今思えばやっぱり違って、先ほどのような意図があったんですが、迷いがあったし、お互い見る景色に差が出てしまっていたんです。

日野 本当にただただ自分のセルフマネジメント能力の低さが原因で……。責任を持って進めるためには「やりたいこと」の中から、さらに選ばなきゃいけなかった。結局、最終審査直前の1ヶ月ほど、think beyondへのコミットメントが激減してしまいました。

古平 新たなプロジェクトに加わると聞いたときは、「今じゃないでしょ」とは言いました。think beyondにコミットできなくなるだろうと思っていたし、実際そうなりましたから。

日野 厳しめに見積もったつもりだったんですが、生活リズムが壊れるくらいヤバかったですね……今思えば、それにしても細かい意思決定を通して避けることができたことなので、とにかくゴメンしかないです。

――嬉しかったことは?

日野 顧客の世界が変わったことに尽きますね。あと自分たちが想いを込めてつくった仮説が、検証されていく瞬間! 自分たちの想いが、実社会に反映されるのがとにかく嬉しかった。実社会において、自分がゼロから考えたアイデアが影響を及ぼす機会なんて、あんまりないじゃないですか。think beyondで、0→1の味を覚えてしまいました(笑)。

古平 うん、これは2人でやっている中で、めちゃくちゃ実感しました。顧客の行動が明確に変わったんですよ。

僕が嬉しかったのはもう1つあります。日野が加わる前は暗黒期だったんですよ。インタビューしても、仮説を外し続けて時期がありました。救いたい人たちに仮説を否定されるというか、内省を深めて「これなら解決できる」と思った仮説をぶつけても、「君が何をしたいかわからない」みたいなことを言われ続ける時期が結構長かったんです。

でも「そんなもの、いらない」って反応だったのが、仮説検証を繰り返して「セルフコーチング」を見つけた後、実際に顧客が使って変化が起きたときに、「コレいいね!」って良い意味での手のひら返しが起きたんです。ちゃんと理解してもらえるものにできたのが、ものすごく嬉しかった。あとはこの人数を増やせばいいって分かった瞬間でした。

正直なところ、最終審査はマジで自信あったんですよ(笑)。直前で日野がプレゼンの構成を変えたいって言ってきて、「今かよ」と思ったし時間的には厳しかったけど(苦笑)、それがバチッとハマった。ほぼ2日間寝ないで仕上げてくれて、プレゼンの通しリハーサルをやったとき「コレはいける!」って思いました。

最終プレゼンで、ずっと僕らのことを見てきてくれた稲垣さん(稲垣 裕介/ユーザベース Co-CEO)と麻生さんから「なるほどね」って言ってもらえたのも、めちゃくちゃ嬉しかったですね。

──最終審査の結果を受けて、感想を教えてください。

日野 最終審査が終わった後、古平が先ほど話したコミットメントできていなかった時期の話や、プレゼン資料の修正が遅かった話など、ネガティブな出来事について改めて話す機会をつくれました。

それらを一定解消した状態で結果発表を迎えたので、清々しい気持ちで聞いていました。しかもグランプリを獲得できて、コメントを求められた時は「嬉しい」しか出てこなかったですね。投資できるレベルだと経営陣に評価してもらえたのは、めちゃくちゃ嬉しかった。

2次審査のリベンジを果たした後の社内報で、僕、めっちゃイキったコメントしたんですよ(笑)。「think beyondに通らなかったら世界を変えられないので、通ります」とか「どちらにせよ事業化します」みたいな。いやあ、ホントに事業化できて良かったです。

古平 めちゃくちゃ嬉しかったですね! 自信を持って最終プレゼンはできたけど、結果は僕らにコントロールできないので、審査発表は緊張していました。発表の瞬間の写真も残っていますが、結果を聞いて思わず2人でハイタッチしちゃうくらい嬉しかったです。

結果発表を受け、思わずハイタッチする2人

それと、麻生さんから「大起業家になってほしい」ってコメントをもらったのが記憶に残っています。「よし、なろう」って腹が決まった感覚があって。社内で立ち上げるつもりでいたけど、UB外での事業化も考えてほしいって言われて、素直に「自分の足で立ってみたい」「起業したい」って思えました。こんなにいろいろしてもらえて、責任感も芽生えたし、事業で顧客の世界を変えられる自信もあったから、起業しよう、大経営者になりたいって。

日野 僕は起業云々というよりは、事業として成功することが何よりの魅力だと考えていて、その支援をしていただけること、そして選択肢を与えていただいたことが本当に嬉ししかったです。UB外での起業の可能性まで提示してくれるんだって。皆さんに恩を返していきたいと心から思っています。

挑戦とは、未来に期待して、一歩踏み出すこと

――think beyondで得た1番の学びは?

日野 何かを信じ続けて、思考と行動を積み重ねていけば、世界は変えられる。そのことを学びました。自分たちができたからっていうのもあるけど、Brand Designの方々やthink beyondの参加者・事務局、UBの方々が、新卒1年目の僕らを信じて機会を提供し続けてくれたから、僕らの世界が変わった。その僕らが自分たちを信じて行動し続けることができたから、その先で顧客が変わったんです。

何かを信じて行動を起こす。その連鎖が希望をつくっていくんだって実感しました。think beyondを企画・運営してくれたみなさんの希望の連鎖が、今に続いている感覚が明確にあります。

古平 僕は日野みたいにカッコいいこと言えないから、具体の話をします(笑)。顧客に対して仮説検証することが一番の学びでした。現業にもめちゃくちゃ活きましたね。

もともと仮説検証するのが好きなのもあって、「リモート勤務で電話かかってくるのはイヤじゃないかな?」とか「コレは相手が知りたい情報じゃないかも?」みたいに仮説検証しながら仕事ができるようになったんですよ。それがすごく面白くて。

リモートワークにうまくフィットできずに悩んでいた僕が、think beyondで仮説検証の楽しさを知り、それを本業にも適用できるようになったんです。業務も効率化できて、成果も伸びました。think beyondをやったことによって得たもので、本業も楽しくなりました。

――トイカケで世界をどう変えていきたい?

日野 think beyondが希望の連鎖をつくり出すなら、僕らは希望を生み出すキッカケになるサービスをつくりたい

たとえば仕事や人間関係に苦しんで、どうすればいいか悩み続ける人がいるとします。その人が悩んだ瞬間に「トイカケ」を起動すれば、切り替えて、未来に向かって明るく行動できる。そんなスイッチをみんながポケットに入れて持っている世界をつくりたいんです。

古平 僕らのミッションは「あらゆる人の世界が変わるキッカケを」です。必要な仕組みをつくったり、社会構造を変えようというのは、多くのスタートアップがやっていますよね。でも社会や仕組みなど外界のモノだけじゃなく、1人ひとりの見えている世界を変えていくことを通しても、世の中を良くできると思うんです。だから僕たちは「個人」が生きている世界、その見え方を変えていきたい。

連鎖という言葉にもつながるけど、1人の行動が変われば、その近くにいる人の行動も変わります。それが連鎖していけば、世の中で起きている心を痛めるような悲しいニュースは、少しずつ減っていくんじゃないかなって思うんです。

日野 ミッションとビジョンに加えて、スローガンもつくりました。「Being yourself, change a world――自分らしくあることで、それぞれの世界は変わる」。「the world」ではなく「a world」なのが大切で、「個人の世界の見え方・認識の仕方を変えていくぞ」という意味を込めました。

最終審査で審査員からの質問に答える日野

――あなたにとって「挑戦」とは?

日野 未来に期待して、一歩踏み出すこと。未来に期待することが大事だと思います。たとえば僕はスキル的にも人間的にもまだまだ未熟です。でもそれは今と過去の話であって、未来の可能性は無限大。トイカケもこれから大変なことはあると思うけど、きっと楽しいはず。大変かもしれないけど一歩踏み出す。そう思うことが僕にとっての「挑戦」です。

古平 ひと言でいうと「生きがい」です。逆に挑戦がない状態って、退屈でつまらない。挑戦自体、そもそも楽しくて仕方ないんですよ。

さっき日野が話したしんどかったエピソードだって、今は良い思い出です。でも挑戦しないであの状態になったら、きっと今でも嫌なこととして記憶に残っていると思うんです。挑戦している中で起きたことだから、良いことも悪いことも振り返れば「良かったね」ってなる。挑戦しているからこそ言えるというか。

挑戦を止めたら、批評家っぽくなっちゃうんじゃないかな。挑戦する人をうらやましがって、自分を肯定するために相手を否定するような状態になってしまうかもしれません。挑戦で人生が満たされると、どんどん楽しくなる。think beyondにはそれを教えてもらいました。

今はThinkaNewSchoolに参加させてもらっているんですけど、UBの社内にはアセットがめっちゃあると思うんです。子会社をつくるのもそうだし、UBグループのサービスとして起業する道もある。UBグループのメンバーにはいつでも相談できるし、応援してくれる。think beyond事務局の人たちもメンターとして伴走してくれる。運命共同体感というか(笑)、めちゃくちゃありがたかったです。

日野 think beyondで言えば、毎週メンタリングの場があったので、何か進捗をつくらなきゃってなるんですよ。いわゆる締切効果ですね。いつもポジティブな言葉で軌道修正してくれるっていう心理的安全性も大きかった。白杉さん(白杉 大/AlphaDrive所属・think beyond事務局)が「いいね」って言ってくれることで、120%アクセルを踏むことができました。

古平 無謀な挑戦より、できることから1つずつでいいと思うんです。think beyondでは、willをつくることから始まり、顧客開発をして提供価値を考え、MVP期を経て最終審査に臨みます。そのステップが社内に用意されているのって、本当にすごいことですよね。挑戦しない手はないと思います!


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